志村貴子 「娘の家出」 感想
志村貴子の漫画 「娘の家出」①の感想です。
まず。作中の言葉を借りれば「デブ密度高い!!」(あと離婚率も)
志村貴子の描くデブは良いです。ルート225のマッチョの時から思ってた。
表紙の女の子、まゆこの家族・その周辺はふくよか揃い。
そして、まゆこも「デブが好き」「肉の布団に顔をうずめて眠りたい」ときて、一目ぼれした太っちょの男の子が彼氏になります。
なんつーか、血縁て怖い。それは自分にもひしひしと身に覚えのあることだからだと思う。
血のつながりを思うと背筋がそら寒くなる場面が他にも出てきます。
まゆこの同級生のきゃなこが、おばーちゃんと映画館の前にいるんだけど、おばーちゃんが映画のポスターを見て「この役者さん好き」「ちょっと女にだらしない感じがいいのよ」と独り言を言ってて、きゃなこはそれを聞いてない。その後、読んでいくと…うおお! きゃなこが聞いてなくてよかったような、よくなかったような。
読者の視点から見ると、「こんな家はいやだ、抜け出したい」と思うけど、家族の中から見れば必然的にそうなっているのか、当たり前なのか、な。
自分の家族もよその家族から見たら、どんだけなんだろう…
切ないことも歪な状況も、すべっと上品な陶器のような手触りで、だけど確かな重みを感じる。うーん志村貴子読んでる!って感じの一冊。志村貴子好きには嬉しい一冊だと思う。
私が一番好きだと思った話が、まゆこの母の話。
いつもニコニコ、愛想がいいけれど、「わたしなんてなんにもできなくていやになっちゃう」だとか、心の内では色々考えたり、闘志を燃やしたりしている。そんな彼女の、人生のテーマソングは…
独白やセリフが好きなんだけど、そこだけ抜き出しても良さが出ないので、ぜひ漫画でどうぞな話。
放浪息子や青い花は、ビジュアルの麗しいキャラが目立っていた印象だけど、娘の家出は、よりリアルな、本当に身近にいそうな誰かの話って感じ。
続刊を熱望します。いつのまにか連載誌が休刊になってるけど…