ジブリ「風立ちぬ」をみてきた感想
トピック「風立ちぬ」について
ネタばれについては極力抑えて、これから観ようという方の参考になればとおもい書きます。
知り合いから「面白かったかどうか聞かせてね」と言われたのだが。
面白い、面白くないのどちらにも当てはまらないと思った。
私個人としては、気に食わないと思いながらも泣いた。
できれば家で一人でDVDで見て何も憚らず泣きたい。
好きか嫌いで言うと好きじゃないんだけど、もう一度観たい。
なんかずっと夢を見ているような、不思議な映画だった。
なぜ気に食わないのか、夢を見ているようなのかは後述したい。
まず、ラピュタや紅の豚みたいなワクワク感を期待してはいけない。
飛行機ものなんだけど、飛行機がかっこよく飛ぶシーンはないと言ってもいい。(飛行機から見える景色はきれいだ)
不恰好な飛行機がいやに生々しく動いたり、空中分解して無残に散ったりしていた。
迫力のある映像がドーンときて、やっぱスクリーンで見てよかったー!
ていうエンタテイメントを映画に求めるなら迷わずワイルドスピードEUROMISSIONに行くところだ。
風立ちぬはただひたすら、淡々としながら美しい映画だった。
日本の昔の人のことば遣い、二郎と菜穂子の儚い生活、周囲の人の心意気、昭和の日本の風景、
そういうものの美しさが際立っているのは、意図的に美しくないところを排除しているから。
関東大震災にしろ菜穂子の病気にしろ戦争にしろ、生々しいところは出てこない。
徹底して美しさだけで構成することで、夢のような浮遊感
(作中で幾度も展開する機上の夢と妄想でさらにもたらされる)と
二郎・菜穂子の生のきらめきが感じられるんだと思う。
黒川婦人が二郎の妹に言った台詞はこの映画のつくりの点とダブると思った。
ただ、なんかきれい過ぎる気がする。
だからどうしろ、こうしろ、というのもないのだけど。
二郎も菜穂子も真っ直ぐ恋愛をしていて、きれいだけどなんか恥ずかしい。
それから、知らない引用や知らない時代のことがたくさん出てくるのもあって、
美しすぎる全体と二郎の脳内映像があいまって置いてけぼり感が強く、
自分とは遠い世界の話だなっておもってしまった。
もちろん、観たあとでこれはファンタジーだと認識するんだけど、
ポニョやハウルみたいに最初からファンタジーとわかっていたわけではない分、
(前情報は極力見ないようにして行った)
ついていくのにちょっと労力がいるなと思った次第。
そんな内容なので、家族で観に来た小学生なんかは最後までおとなしくみていられない様子だった。
30過ぎた自分でも、ちょっと早いかなって思ったくらい。
後ろの席にいた40過ぎくらいの夫婦の男性がガチ泣きしていたので、
そういう層にはぐっと来るんだろうなと思った。
私が泣いたのは菜穂子への感情移入ができたからなので
女性がみてもつまらないと言うことはないとおもう。
瀧本さんの演技はすごく合っていたし、真に迫るものがあった。
庵野さんの演技は初めひどいと思ったけど、後ろのほうは段々良くなってきた気がする。
むしろ庵野さん以外はみんな上手だった。野村萬斎なんかわからなかった。本職の声優を入れたのかと思ったくらい。
きわめて美しく、とても日本的で、詩的な映画だった。
堀辰雄の「風立ちぬ」を中学生のときに読んだきりなので、もう一度読んでからまた映画をみたいとおもう。
こんな物語を作れる宮崎駿は本当に変態(褒めことば)だな。
というのが一番最初の感想だった。